イキイキ情報紙「あしすと」は毎月第3木曜日高知新聞夕刊に掲載されています。

あしすと
12月
Vol.151

うま味で作る、わが家の味


効かせて、おだし

特産のかつお節や宗田節、だしジャコなど、
海の恵みを生かしてきた、土佐の食文化。
わが家で簡単に作れる基本のだしは、
飽きないうま味、料理の大国柱です。

うま味と日本食への評価

 和食のベースにあるのは、食欲を誘うだしの香りとうま味。だしとは、素材から取るものではなく、人の手で引き出すもの。だから、「だしを引く」のです。日本料理には、「椀刺」という職人用語があります。だしの効いた吸い物でその店の味が、刺し身で包丁さばきの腕が分かるのだそう。
 今、日本の食文化を支えてきた「だし」が、かつてないほど世界で注目されています。フランス料理に昆布のだしが使われ、だしファンが増えました。西洋料理が足し算なら、日本料理はうま味を引いて取る、引き算の料理。うま味によって味付けを薄くできるとあって、人類共通の課題である糖尿病の予防や食事療法にも、だしが役立てられています。

土佐のだし文化に親しむ

 高知県では西部が宗田節、中部と東部は煮干し類を主体に、昆布を合わせて使うことが多いようです。高級めんつゆに人気の宗田節は9割が土佐清水産なので、使わなければもったいない地物。かつお節の中でも最高級の、カビ付けをした本枯節も作られています。普段使いでは「土佐の合わせだし」と呼ばれる、花かつおやあじ節、昆布を合わせた複雑なうま味のだしが、おなじみです。一方、昆布を使ったすしが好まれる土地柄で、産地ではないものの、昆布もいろいろな種類が手に入る高知県。身近にある海のだしを、もっともっと使いこなしたいと思います。

作りたての風味が身上

 だしを引くための節や昆布は乾物で保存がきくけれど、だしそのものは、作り置きして保存するのが難しく、引きたての風味・うま味が身上です。だしを上手に引くこつは、何度かやってみて、自分に合った加減を舌で覚えること。そして、いったん身に付いてしまえば、忘れません。そこから、いろんな料理への展開も生まれるはず。
 例えば高級料亭では、客が着席してからかつお節を削るほど、削り立ての香りを大事にしています。自分や家族のためにできる心のこもった料理の基本、週に1度はだしを取ることを習慣にしてみませんか。
海産物のだし、いろいろ。味や料理をイメージできるようになれば、しめたもの
素材を生かす「だし」使いは、
愛情料理への一歩

市場の目利きに聞く、だし素材あれこれ

 だしを素材ごとに飲み比べると、それぞれの特長を舌で覚えることができます。失敗を恐れずに、何度か自分でだしを引いてみるのが近道。そして加減が分かったら、今度は他の素材との組み合わせにも挑戦して、味の変化を自分のものに。
 弘化台の干物屋さん、松原さんによると、マコンブ+花かつお+アジジャコ小で、まろやかなうどん用だしが出ます。毎月第1土曜日に開催される市場の食イベントでは、うどんの汁をお客さんが残さないのが自慢だそうで、お汁だけお代わりして飲む人もいるほどです。
取材協力/高知市中央卸売市場(弘化台)の塩干魚仲卸、 (株)松原敏夫商店の松原隆さん
【かつお節】
 高知といえばカツオ。県内産の本枯節や花かつおが手に入ります。土佐市宇佐町は、今から200年ほど前に、薫製して食べられる青カビを付ける「改良土佐節」発祥の地となりました。現在、県内の本枯節は土佐市のみで製造されています。
※削り節の保存は、口の閉まるビニール袋に入れ、空気に触れさせず、冷凍で。
【本枯節】
かつお節の最高級品。世界一硬い発酵食品といわれる。カビ付けと天日乾燥によってタンパク質が化学的に変化し、特有のうま味や香りが生まれる
【花かつお】
カビを付ける手前のかつお削り節で、そのまま食べてもおいしい
【混合節】
ムロアジのむろ節やさば節などをブレンド。低価格でみそ汁や煮物用に
【宗田節】
土佐清水産、ソウダガツオ(メジカ)のかつお節。めんつゆ向き。カビ付けはしておらず、形はかつお節より小さく、色や酸味が濃い
【煮干し】
 イワシのジャコやアジジャコなど、高知の家庭で昆布と合わせてよく使われている煮干し。こくのあるだしが引けます。イワシは頭やわたを取ることで、ぐっとまろやかなだしに変身。
【カタクチイワシジャコ】
広島県や香川県が産地。わたの苦味が麺類を爽やかに演出。さぬきうどんの定番は、ホタレイワシのいりこだし(中羽ともいう)
【アジジャコ】
大(島根県境港産)・小(京都府舞鶴産)。苦味が少なく、みそ汁や煮物に便利なだし。夏場はそうめんにお薦め。だしがらは煮物にそのまま入れて食材にも。おいしいアジジャコは、皮から見える身の部分が白っぽいものが特に良く、赤いものは魚の味が強め
【昆布】
 日本の三大昆布といえば、利尻昆布・羅臼昆布・真昆布。それぞれに持ち味や使い方が違い、等級があります。表面に付いた白い粉はうま味成分なので、洗い落とさないように。気になる場合は、絞った布巾で軽く拭き取って。昆布は干ししいたけと同様、精進料理のだしにもなり、水でも出せます。
※昆布は一晩(約8時間)水に漬けておくと、十分だしが出ます。
【日高】
三石昆布ともいう。高知でも最も使われている万能昆布。幅が狭く、緑がかっている。だしを取ったり昆布巻きなどに使える、早煮えの溶けにくい昆布。最も昆布らしい味わいとされる
【利尻】
上品に澄んだだし、濃い香りが出る、だし専用昆布。やや塩味を含み、黒褐色の硬い葉。京都の料亭でも御用達
【羅臼】
黄色がかっただしは濃厚で個性が強い。やや塩気を含む。だし専用昆布で宗田節とは相性抜群。葉の先が丸みを帯びている。別名オニコンブ
【真昆布】
肉厚で甘めのだしが引け、関西風うどんや鍋物に。だしと食材両用で使い勝手は良いが、水に1時間ほど漬けるととろけるので、用途に応じて
基本の「白だし」を引く
だしは必ず水から引き始めます。お湯からでは十分に引けません。まずは基本となる白だし、味付け前のだしの味を覚えましょう。一番だしの色は、黄金色になるよう、節をたっぷり使います。ただ、多少濁りが出たとしても、家庭では飲んでおいしければ合格です。一番だしでは、うま味の最もいいところを短時間に引き出し、二番だしは、うま味をすべて、とことんまで引き出すつもりで。
右から一番だし(合わせだし)、二番だし、ジャコだし、昆布の水だし
【一番だし】(合わせだし)
材料/水2リットル、
      かつお節60グラム(多めの2つかみ)、昆布30グラム
1. 鍋に水と昆布を入れて火にかける
2. 10分以上火にかけ、沸騰させず80度ぐらいの火加減で煮る。爪を立ててみて、中まで軟らかくなっていたらOK。昆布のうま味を十分に引く




3.
 昆布を引き上げ、すぐかつお節を鍋全体へ広げるように入れる。あるいは昆布を出してからいったん沸騰させて臭みを飛ばし、水を足して沸騰を抑えてからかつお節を入れる。いずれも節を入れたらすぐ火を止める




4. かつお節が自然に沈むのを待ち、かき混ぜない。箸で押し込むと濁る。あくが気になる場合は、鍋肌からすくう
5. 鍋を傾け、だしを静かにこす。急ぐと濁ってしまう。ざるだけだと粉末が入るので、ネル生地が最上とされるが、ペーパータオルを敷くとよい。かつお節のえぐみや濁りが出るので、絞らない
一番だしの料理/すまし汁・みそ汁・お雑煮・茶わん蒸し・寄せ鍋・数の子・だし巻き・うどん・そば・炊き込みご飯など
【二番だし】
材料/水2リットル、一番だしのかつお節と昆布、
      追いがつお30グラム
1. 材料を鍋に戻し、水を張る。弱火で10分ほど沸騰させる。好みで1時間煮てもよい
2. 火を止めてかつお節を足して、追いがつおとする
3. こしたら、しっかりとだし汁を絞り出す
二番だしの料理/みそ汁・煮物・鍋物・おでん・うどん・そば・炊き込みご飯・天つゆなど
手ばかりの量は? 
節類は、ひとつかみで約25グラム前後と覚えておきましょう。プロの使う量を見ると、家庭より多いと感じますが、だからこそ十分なうま味と香りが引き出せるのです。

味付けのこつ
吸い物を作るなら、一口めでは薄いぐらいの味に。そのほうが、全部飲み終えたとき、ちょうどいいなと感じる味付けになります。
その日に使う。食材を使い切る
だしは作り置きしても風味が落ちてしまったり、腐りやすいので、その日のうちに使うのが理想。2日以上保存するなら、冷凍しましょう。また、だしを引いた後の乾物を、つくだ煮やふりかけなどの料理に生かすのも、家庭ならではのエコな再利用です。
◎土佐酢
だしがあれば、土佐酢も作れます。かつおだしの入った三杯酢で、あえ物や南蛮漬けはいかが。
分量は、だし150、お酢50 、塩小さじ1/3、砂糖大さじ1、薄口しょうゆ大さじ2。材料を火にかけ、臭いと酸味を飛ばし、沸騰したら火を止めます。最後にかつお節を入れてこせば、出来上がり。

◎お雑煮のこと
同じ県や地域であっても、家ごとに少しずつ違うお雑煮。基本の一番だしが引けたら、今度のお正月には、家族でわが家のお雑煮を味わってみませんか。盛り付けを品よく見せるには、だしを少なめに張り、素材は彩りをバランス良く。

取材協力/RKC調理師学校・山下修一さん

だしは簡単。まずは身近にある素材で

 白だしが飲める専門店が昨年10月にオープンしました。宿毛市に工場を持つ海産物メーカー、泉利昆布海産の直営店です。現社長の泉谷伸司さんの熱意が形になりました。泉谷さんは日曜市で昆布などを長年商った名物おばあちゃんの孫。街や人との縁がある高知の台所・大橋通に、だし文化を広めるお店を持ちました。
 だしそれぞれの違いや、難しくないことも伝えたいと、店頭には日替わりの白だしを置いて、試飲できるようにしています。「白だしは残ったらお酒で割って飲むと、あったまりますよ」。店内で簡単な食事もでき、手をかけた一杯のみそ汁を、じっくり味わっていくお客さんが増えました。お客さんの8割は地元の人たち。それも、若い人たちに好評だそうです。
 小学校での食育教育にも関わっています。「子どもたちだけでなく、親の世代や妊婦さんにこそ、本物のだしを手作りするおいしさ、健康や栄養面も知ってほしい」。顔が見えるお店だから、分からないことはどんどん聞いてもらうのが一番です。

左/素材ごとのアドバイスを聞いたり、量り売りができる楽しいお店。 右/店頭で試飲できる白だしは、羅臼昆布と宗田節でした。日替わりのみそ汁や塩おでんも、この白だしから作っています
◎旨味屋
高知市帯屋町2-4-2 TEL088-855-7850
営/9:00〜18:00、水曜定休(12月は31日まで、年始5日より)
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