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アルモドバル監督の脚本力が生み出す最高のストーリーテリング 『抱擁のかけら』
 『抱擁のかけら』=(c)Emilio Pereda&Paola Ardizzoni/El Deseo
 『抱擁のかけら』=(c)Emilio Pereda&Paola Ardizzoni/El Deseo
 日本人にはマネできない色彩感覚と、女優の魅力を引き出す天賦の才。でも、それ以上にアルモドバルのスゴさを際立たせるのが、“脚本力”だろう。本作でも、彼にしか書けない最高のストーリーテリングを堪能させてくれる。
 しかも今回は、主人公が元映画監督の脚本家。アルモドバル自身の脚本作りのノウハウが登場人物を通して垣間見られるなど、内幕ものの面白さまで味わえる。
 14年前のある事件で最愛の女性と視力を失った男が、再び事件と向き合うラブストーリーで、2つの時制が行き交い、しかも劇中の映画まで入れ子構造になった複雑さ。その上ミステリー仕立てで、欲望と嫉妬、裏切りと復讐、愛と官能、喪失と再生…ドラマチックな要素がテンコ盛りなのに、食傷にならない絶妙のさじ加減はさすがだ。それにしても、男女を問わずこれほど人間の本質に迫れるのは、本人が性別を超越したセクシュアリティーの持ち主だからだろう。
 それでいて、本作が“脚本の映画”にとどまらないのは、冒頭に挙げた“監督力”の賜物である。★★★★★(外山真也)


 【データ】
監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
出演:ペネロペ・クルス、ルイス・オマール
2月6日(土)から全国公開
(2010/02/02)
外山真也のプロフィル
 外山真也
 とやま・しんや 映画ライター&時々編集者。1966年愛知県出身。学生時代はヨーロッパ映画を中心に見ていたが、情報誌の仕事が長かったため、今は洋の東西を問わず、単館系からハリウッドまで幅広くが信条。主な執筆媒体:月刊TVfan、日本映画navi、MOVIE GATE、だんだんたんぼ。
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