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甘酸っぱくも切ない世界へ 『真綿荘の住人たち』 島本理生著
 紋切り型連発の特異な文体にも注目。
 紋切り型連発の特異な文体にも注目。
 ひとり暮らしが心地よい。誰にも気を使わずマイペースに暮らせる。寮や下宿への憧れなんてない。協調性が足りないので迷惑をかけそうで怖い。でもだからこそ、人間関係が織り成す物語があったりするのだろうか?
 恋愛小説の書き手として注目される島本理生。今作では真綿荘という下宿で暮らす人々の悲喜こもごもの模様を描く。もちろん著者の手にかかれば、そこは恋愛感情にあふれた甘酸っぱくも切ない世界へ。
 大家の綿貫と内縁の夫・晴雨との不可解な関係。大学進学と同時に真綿荘にやってきた大和君のほろ苦いかけおち。女子高生の恋人をもつ椿の戸惑い。大和君に恋する鯨ちゃんに言い寄る先輩。登場人物のさまざまな心模様が迫ってくる。
 それぞれ悩みを抱えながらも共同生活はたんたんと続く。事件らしきことも男女のモツレに終始し、もっと深い人間ドラマを期待する向きには物足りなく感じるかもしれない。でもこんな色恋沙汰だらけの下宿なら、住んでみたいかも。
 (文芸春秋 1333円+税)=一色こうき
(2010/03/08)
一色こうきのプロフィル
 一色こうき
 いっしき・こうき 1980年生まれ。ライター。本と音楽が得意分野。最近、開高健のルポルタージュをあらためて読みあさり、あまりの素晴らしさと、ひるがえって自分の文章の凡庸さに気付かされ、筆を折りたくなりました。でも、思い直して氏に一歩でも近づけるよう一字一句、入魂でレビューを書き上げたいと思います。
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