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【特集フジロック’08 UKロック編】17分間のオンリー・ノイズ

 7月25—27日、新潟県・苗場スキー場で開かれたフジロックフェスティバル。この日本最大規模の夏の野外フェスは12回目の今年、日英修好150年を記念して、UKロックを強く打ち出したラインアップとなった。

 今月、来月とお送りするフジロック特集。第1弾は、UKロック一色で染め上げてみた。かの灰色の空の島国がはぐくみ、参加アーティスト200組超、入場者延べ10万4000人という熱狂の渦の中で響いたサウンドで。

 メーン記事は「マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン再結成」だ!

【特集フジロック’08 UKロック編】17分間のオンリー・ノイズ

 十七年間、わたしたちは待ち続けていた。

 マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン。日本での通称、マイブラ。一九九一年、ギターロックの革命ともいわれた、美しいノイズが大波のように押し寄せる2ndアルバム「ラヴレス」を発表。その後、表舞台から消え、活動再開、新作発表という話が何度も持ち上がっては流れた、そんなバンドを。

 初日、二十五日午後九時半。フジロック最大のステージ、グリーンステージに、あの男女四人は現れた。

 一曲目、「アイ・オンリー・セッド」。延々繰り返される浮遊感ある美しいリフ。二曲目は浮遊感はそのままに、ビートを効かせた「ホエン・ユー・スリープ」。バックにはブルーの、デジタル版「砂の嵐」とでもいうような映像が流れていく。

 その後、1stアルバム「イズント・エニシング」のインディーギターロックの曲と「ラヴレス」の曲を行き来し、そして—。

 午後十時十四分。ダンサブルなドラムが入り、激しくも美しいギターが鳴った。

 「スーン」が始まった。

 この曲がリリースされた一九九一年。UKロックは七〇年代後半のパンク勃興(ぼっこう)に続く「第二の革命」の中にあった。ダンスミュージック「アシッドハウス」とロックの融合=セカンド・サマー・オブ・ラブ、そしてマッドチェスター・ムーブメントに。

 この流れをリードしたアーティストがフジロック’08を沸かせた。元ザ・ストーン・ローゼズイアン・ブラウン、そしてプライマル・スクリーム

 マイブラは、彼らとは一線を画していた。マッドチェスターのような肉感あるグルーヴよりも、フィードバックノイズや、ディストーション、ディレイ、ファズを掛けまくったギターサウンドを奏でる「シューゲイザー」一派と目された。

 ただ不思議なことに、この二つのムーブメントをつなぐ曲をマイブラは生み落とした。それがスーンだった。

 ひときわ大きな歓声。会場全体がゆらゆらと揺れた。

 最後の曲は彼らが初めて強烈なノイズをまとった八八年の名曲「ユー・メイド・ミー・リアライズ」。CDにパッケージされた通りの、サウンドとハーモニーが会場の温度を上げていく。そしてCDバージョン通りに曲が終焉(しゅうえん)に向かい、最後のフレーズの後…。

 かき鳴らされるギターとベース。乱打されるドラム。すべての音にエフェクトが掛けられ、ノイズが響き合う。

 ハンズアップと歓声が起きる。が…一向にノイズはやみそうにない。十七分余りたってようやくノイズは収束に向かい、重なるようにメロディーが立ち上ってくる。音像は再び、ユー・メイド・ミー・リアライズの形を成し始める。

 彼らの曲「オンリー・シャロー」にちなめば、オンリー・ノイズの時間だった。まるで十七年間の空白を埋めるための。

イアン・ブラウン

イアン・ブラウン 2日目、屋内のレッドマーキーのトリで登場。最新アルバム「ザ・ワールド・イズ・ユアーズ」の曲を中心に、ローゼズの「ウォーターフォール」「アイ・アム・ザ・レザレクション」を披露。


プライマル・スクリーム

プライマル・スクリーム 2日目と最終日、グリーンステージに登場。過去の名シングルも次々プレイ。2日目は「スワスティカ・アイズ」「ロックス」「カントリー・ガール」。最終日は「ローデッド」まで演奏した。


マイブラ・セットリスト

マイブラ・セットリスト
01.I only said
02.When you sleep
03.You never should
04.Cigarette in your bed
05.Come in alone
06.Only shallow
07.Thorn
08.Nothing much to lose
09.To here knows when
10.Slow
11.Soon
12.Feed me with your kiss
13.You made me realise

【注目アーティスト】ザ・ミュージック 不調乗り越え“帰還”

ザ・ミュージック  フジロック’08でのUKロック。ゼロ年代デビュー組のプレイも素晴らしかった。ただ…会場を最沸点に持っていったのは1stアルバムのヒットナンバー。すでに2ndを出している彼らにとって、ちょっと不満だったかもしれない。

 例えば。初日の二組。鋭利なギターリフのブロック・パーティーは「バンケット」「ヘリコプター」。ラウドでエレクトリックなカサビアンは「クラブ・フット」。二日目のハード・ファイは鍵盤ハーモニカでイントロを奏でた「キャッシュ・マシン」や、「ハード・トゥ・ビート」だった。

 こうした状態が最終日に打ち破られた。今夏3rdを出した、強靱(きょうじん)なグルーヴが持ち味の四人組、ザ・ミュージックによって。

 1stからの「ザ・ピープル」、2ndからの「ウェルカム・トゥ・ザ・ノース」に会場はヒートアップ。それだけでなく、3rdからの曲、特にアルバムのタイトルナンバー「ストレングス・イン・ナンバーズ」にも大きな歓声が沸いた。

 会場の一角にある“落書き”コーナー。そこにこうあった。「おかえり、ザ・ミュージック」。極度の不調、精神的不安定を経ての、四年ぶりの3rd。グルーヴの強さは失われていなかった。

 さらに。ライブのラスト、2ndからの「ブリード・フロム・ウィズイン」では四人が打楽器をたたきまくっての、祝祭的なトライバルリズムセッション。フジロック’05の再現、いや、’05をしのぐプレイだった。

 失われていないどころかさらなる進化。わたしたちはその証人となった。

会場にストラマーの館

ストラマーの館  フジロックを愛し抜いた元ザ・クラッシュジョー・ストラマー(1952—2002)。フジロックの会場内に、彼を悼む施設がある。

 パレス・オブ・ワンダーというステージの脇。一辺2メートルほどの青い立方体がそれだ=写真右。造りは客車で、長いすが向かい合わせに2つ。車内にはジョーのイラスト=写真左=や「RESPECT THE KING」の文字が。

ジョーのイラスト ジョーは99年、第3回のフジロックに出演。ロンドン・コーリングを演奏した。亡くなる直前のライブではミック・ジョーンズと約20年ぶりにザ・クラッシュの曲をやった。

 今回の日英修好150年にちなんだラインアップ。彼が生きていたら…。

 ここに来ると、誰でも、頭の中にザ・クラッシュのナンバーが流れると思う。僕は「ステイ・フリー」だった。


(2008/08/01)



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