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「spoonfull 音楽祭」@高知市城西公園 まるで「家族の風景」

全国的人気の豪華ラインアップによる野外フェスが、高知で開かれた。5月5日の「spoonfull 音楽祭」@高知市城西公園野外ステージ。ハナレグミ(永積崇ソロプロジェクト)、原田郁子、おおはた雄一、曽我大穂—優しさと温かみ、グルーヴが同居する音楽が持ち味のアーティスト4人と、実行委員会を組織した高知の市民有志ら7人、スタッフ、出店者ら、そして650人のオーディエンス。彼、彼女たちは、どこにもない高知オンリーのフェスをつくり上げた。

その光景は—。


午後1時半。小雨の降る中、ハナレグミ、原田、おおはた、曽我がステージへ。まずは4人のセッション。オープニングナンバーには、ハナレグミとおおはたのブルージーなギターがさえる、このフェスのためのテーマソングを用意してきていた。お尻フルフル、ビューティフルフル、スプーンフル、スプーンフル…。数曲をジャムった後、個々のソロが始まる。

ハナレグミはステージに現れるや、こう言い放っていた。

「今日はちょっとヤバいよ。ゴキゲンな一日になるよ」

この言葉が、現実になっていく。

        ♪♪♪

チケット発売初日で「残りわずか」にした県内外のファンらが集まり、会場はアーティストへの信頼に満ちていた。その期待に応える美しい楽曲群。おおはたの「時がたてば」、原田の「ぴあの」、ハナレグミの「音タイム」、などなど。終盤には高知出身、広末涼子の「MajiでKoiする5秒前」をカバー。温かいサービス精神は大合唱を巻き起こした。


さらに4人は、ある一人のつながりあるアーティストを楽曲で“登場”させた。フェスの3日前、5月2日に亡くなった忌野清志郎。原田が忌野と共作の「銀河」を歌い、ハナレグミにリクエストした。忌野の「君が僕を知ってる」。この2曲で、アーティストとオーディエンスの「つながり」はさらに強まった。

そもそも、このフェスはどうして生まれたのか。「始まりは大穂」と男性実行委員。「十数年前。高校生やった大穂が高知に来て。いろんな高知の人に出会ったんよ。それがみんな、いい人やった。それから高知に再々来てくれるようになって。永積君、郁子ちゃん、おおはた君を連れてね」

普通の市民とアーティスト。そんなつながりの中から1年ほど前、「フェスをやろう」という話が持ち上がった。

困難も多々あったが、それを乗り越えて、実現。

ある女性実行委員は言う。「実行委員はみんな、それぞれの仕事もあって、それが終わってフェスの準備。やったことないことばかりで。どうしてこんなことがやれたか? つながり、かな。出てくれた4人。チケット売ってくれた人。出店してくれた人。もうたくさんの人のつながり」

フェスではほかにも、もっと多くのつながりが生まれていた。


ネットで知り合い、このフェスで初めて顔を合わせた男女。

「ohana(永積、原田とオオヤユウスケのユニット)のメンバーって誰だったっけ」とど忘れしたグループと、優しく答えを教えた見知らぬ女性。

一緒に肩を組んで歌っていた名前も知らない誰かと誰か。

この日のすべて。それはまるで—ハナレグミが披露した自身の名曲—「友達のようでいて 他人のように遠い 愛しい距離が ここにはいつもあるよ」と歌う「家族の風景」のようだった。たくさんの人のつながりが生み出した、素晴らしい時間と空間だった。

       ♪♪♪

午後5時すぎ。オーディエンスが会場を後にしていく。ハナレグミの曲、忌野の曲…いろんな歌を口ずさみながら。この日、初めて会った人々が一緒に居酒屋へ向かう姿も。フェスが終わると、「家族の風景」は雨上がりの少し雲の多い夕景の中に溶けていった。

【注目アーティスト】AUTOBAHN 人との縁で実現

AUTOBAHN 人との縁で実現

さまざまな機材が複雑な配線でつなげられていく。メロディーを奏でるシンセサイザー、リズムを刻むパソコン、モンスターの咆哮(ほうこう)などを入れたサンプラー。そして、ウニョウニョとアシッドなサウンドを加えるTB—303。

操るのはKozo 303 Tamari(21)。

YMO中学生は、佐川高校に入ると「ヴォコーダーで『TOKIO』と言ってみたい」とシンセを買い、1人で楽曲作りをスタート。そして今秋、大きな一歩を踏み出す。デジタルパンク2人組、AUTOBAHNとして、スイスのインディーレーベルからCDをリリースするのだ。

順調な歩みの中で彼は感じている。「音楽って、こんなに人とつながれるんだ」

2005年12月、高校の文化祭でデビューし、1カ月後には知人の紹介で高知市の「ハリーの家」でのイベントに出演。ライブを重ね、07年12月には周りから「一緒にやれば」と勧められ、マリリン・マンソン好きのギター、Shouta(20)が加入。サウンドが初期プロディジーのように重く、熱くなっていく。08年3月にはアメリカ出身の当時のメンバーに連れられ、同国とカナダで2週間ツアー。そこでレーベルの社長と知り合う。

彼の機材のように、人々がつながった。CDリリースはその結晶である。

5月9日、古巣のハリーの家。パンクの精神を持ち、シンセの音を響かせ、そして踊り、叫ぶ—2人はAUTOBAHNらしいステージを全力で披露していた。支えてくれた高知の人々への「お礼」のように。

シューゲ今昔

イパ「ゼイ・ノウ・ホワット・ゴースト・ノウ」

イパ「ゼイ・ノウ・ホワット・ゴースト・ノウ」=写真 イギリスのダンスミュージック・レーベル、ニンジャ・チューンから、ネオシューゲイザー・アーティストが5月に出した日本盤2nd。メランコリーとノイズを行き来するギター。ダンサブルなビート。エレクトロ通過なのでスーパーカー的。1stも必聴!

ライド「ノーホエア」 シューゲイザー。それはイギリスで1990年から数年間続いた、フィードバックノイズ、ディレイ、ディストーションなどを「虚無の美」としてまとったギターバンドによるムーヴメント。代表作を選ぶとすれば、これ。8曲目「ヴェイパー・トレイル」で、21世紀もうねる波を見ながら泣く。

nanocycle「something burning」 ネオシューゲイザーは日本でも同時進行中。加えて、マッドチェスターも飲み込んだのがこのバンド。2007年リリースの本作には1990年前後のUKロックが「ゴーイング・ブランク・アゲイン」とばかりに、海と時代を超えて結実している。


(2009/06/05)



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