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特集フジロック’09 〜体現、日本ロック史

ずっと夢見させてくれてありがとう

忌野清志郎 スペシャル・メッセージ・オーケストラ NICE  MIDDLE  with  New  Blue  Day  Horns

 フジロックフェスティバル’09=新潟県苗場スキー場、7月24ー26日=は例年通り、ヘッドライナーに米英のトップランナーが座った。が、ラインナップを見渡せば…これまで以上に、日本人アーティストと西洋音楽の一つであるロックとの「交わりの歴史」が示されていたように思う。フジ特集第2弾は邦楽バンドの勇姿を紹介しよう。彼らが切り開いてきた地平とともに。

 今年5月に亡くなった忌野清志郎。彼も1970年のデビュー以来、ロック、ソウル、ブルーズを愛し、日本語で対峙し続けた一人であり、「ロッケンロール口語体」とでも呼べそうな独特の言葉と節回しは、多くのフォロワーを生んだ。

 フジ2日目、午後7時10分。清志郎を慕う国内外のアーティストが一夜限りのスペシャルバンドとして、メーンのグリーンステージに登場した。

 清志郎が2005年、フジで歌った「JUMP」の映像とサウンドも流れた。それに合わせて踊り、跳ね、コール&レスポンスをしていると…泉谷しげるがこの夜、叫んだように「忌野は死んじゃいねえぜ」という錯覚に襲われる。

 それでも。この日の清志郎の歌をアーティストたちと一緒になって歌っていると、彼の不在を感じずにはいられなかった。「今はみんなといっしょだもんね」(「シュー」)「ずっと夢見させてくれてありがとう」(「デイ・ドリーム・ビリーバー」)「僕の事すべてわかっていてくれる」(「君が僕を知ってる」)…。アーティストの語る清志郎との思い出が追い打ちを掛けてくる。

 ザ・クロマニヨンズの甲本ヒロトは、ちょっと違った。「REMEMBER YOU」のラスト、こん身の力でハープを吹き終わると、静かに語り掛け、そして叫んだ。

 「ロックンロールは死にませんよ。ここにいる皆さんが、世界中の子どもたちが、笑ったり、泣いたりするのを、やめない限り、ロックンロールは死にませんよーっ。泣きわめいてください、大声で笑ってください、ロックンロールは死にませんよーっ!!」

 終演間際。再び清志郎の映像が、汗だくでMCをする姿が流れた。

 「みんなに聞きたいことがあるんだ。フジロックベイベー。愛し合ってるかい? 愛し合ってるかーい? イェー。エブリバディ・セイ・イェー。イェーって言えーっ」

 その声が消えると同時に、ラストナンバーが響き始めた。「できすぎだろ」と言いたくなるような夕立の上がった苗場の夜空に、誰もが知っているあのギターリフのイントロが、グリーンステージを埋め尽くしたオーディエンスの大合唱が。

特集フジロック’09  〜体現、日本ロック史

頭脳警察 頭脳警察 3日目 今年で結成40年を迎える、8ビートロックに日本語をしっかりと乗せた「日本語ロック」第一世代。しかも反体制。バックバンドを従えフジに現れたギター&ボーカルのパンタとパーカッションのトシは、まさにその歴史的事実を象徴するナンバーをオープニングに選んだ。「ボーン・トゥー・ビー・ワイルド」の日本語カバーを。

筋肉少女帯 筋肉少女帯 2日目 80年代後半からのバンドブーム期、ハードロック、プログレッシヴロックにキテレツな日本語詞という唯一無二のスタイルを確立したのがこの「筋少」であり、ボーカルの大槻ケンヂ。「踊るダメ人間」「日本印度化計画」「元祖高木ブー伝説」など、タイトルからしてキテレツな往年のヒットナンバーでホワイトステージを盛り上げた。

サケロック=左と、ROVO サケロック 初日 21世紀に続々現れたインストバンドの中でも実に日本的なバンド。その核はトロンボーンの浜野謙太。彼の奏でる優しい音は、デキシージャズなどのルーツミュージックに、ちんどん的要素などもミックスしている。

ROVO 3日目  90年代半ばに活動を始めたインストバンド。ツインドラムの激しいビートに乗る勝井祐二のエレクトリック・バイオリン、ノイズとメロディーを行き来する山本精一のギターは個性的で、人呼んで「人力トランス」。

サニーデイサービスサニーデイサービス 3日目  日本語ロック第一世代のはっぴいえんどのような「ですます調」歌詞とフォークロックを、90年代半ばに非現実的な個性として奏でた3ピース。1曲目「さよなら!街の恋人たち」が鳴った瞬間、僕らはまたしても言文不一致の世界へ引きずり込まれたのだった。

ソウルフラワーユニオン ソウルフラワーユニオン 3日目  90年代前半、リズムやメロディーにも祭りばやし、ちんどんの要素を取り入れ、さらに沖縄も朝鮮半島もアイルランドの音楽も飲み込んだ奇跡の大所帯バンド。中川敬がギターを三線に持ち替え歌った名曲「満月の夕」は、オレンジコートを温かく包み込んだ。

アベに捧げたライブ TheBirthday

熱いシャウト「アリシア」

 フジ2日目、メーンのグリーンステージ。トップバッターは日本を代表するストレートなロックンロール4人組、The Birthday。ギター&ボーカルのチバユウスケは、ステージに出てくるなり言った。いつもと変わらぬ調子のハスキーな声で。

 「今日のライブは、オレたちの大親友だったアベフトシに捧(ささ)げます」

 チバの後ろで、ドラムのクハラカズユキも表情を引き締めていた。

 アベフトシ。1994年から2003年までチバ、クハラらとともに、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTとして活躍したギタリスト。その彼が7月22日、42歳の若さで亡くなった。

 細身の長身を反って高速カッティングに没入したり、動き回りながらギターを持ち上げ、右腕を大きく振り上げ、ジャンプ…一瞬一瞬のポーズを決めるアベの姿は、ギターに、ロックンロールにとりつかれた男のそれだった。

 フジの歴史を描いたDVD「FUJIROCKERS」に、MICHELLEの映像も収められている。1998年8月2日のステージ。夏の野外。「ロックンロールを1曲」と叫ぶチバの隣で、アベがカッティングを決め、右腕を上げる。

 そんな光景は、もう…。

 だから。誰もが、今回のフジのThe Birthdayに期待した。きっとアベのことに触れてくれると。チバは応えてくれた。演奏も。熱いロックンロールショーは「カーニバル」で始まり、「涙がこぼれそう」「あの娘のスーツケース」へと一気になだれ込む。

 全9曲。ラスト前は「アリシア」。最後のサビ「アリシアの願い 届いたかな/雲のすき間から 聞こえてるさ/アリシアの想い 届いたかな/吸い込まれたけど かなうはずさ」の後、「かなうはずさ」と何度もシャウトする曲だ。

 そのシャウトが、この日はこう聞こえた。

 「届くはずさ」

 チバが一瞬、青空へと目をやったように見えた。

 僕たちは、心の中で続けて歌った。「雲のすき間から聞こえてるさ」。今日のライブは間違いなく、アベに届いたと確信しながら。

【DISC評】フジがくれた奇跡の出会い

シェウン・クティ&エジプト80「クティ」ボイコット「アマネシオ」F.I.B JOURNAL「Ordinary Folk Records」

 フジで偶然出会い、感銘を受けたアーティストのCDを紹介します。こういう出会いがあるのがフェスの醍醐味。

 F.I.B JOURNAL「Ordinary Folk Records」=写真右 初日の大発見! ウッドベースとドラムによるリズムの人力ループ。ドラムは時に「歌っているように聴こえるパーッカッシヴな乱れ打ち」も。それに乗るのは…英語詞をポエトリーリーディングするボーカル。しかも拡声器で!! ローファイに響く声はヒップで、たまらなくクール。

 ボイコット「アマネシオ」=写真中 初日の昼、オレンジコートをふと訪れると…雨中の泥まみれスカパーティーの真っ最中! ステージにはこのスペインのベテランパンクバンド。踊らせるだけでなく、ポルカなど民族音楽を取り入れたアルバムタイトル曲でエモーショナルに訴えてくる。ワールドミュージックを積極的に取り入れたジョー・ストラマーの遺志を継ぐ者、かも。

 シェウン・クティ&エジプト80「クティ」=写真左 ロックやジャズの影響を受けながらも、アフリカのリズムを忘れず「アフロビート」をつくり上げた故フェラ・クティ。彼の息子と2日目に出会った。父のバンドとの競演は予想通りアフロビート+凶悪なホーン! オーディエンスを踊らせまくった全曲とも素晴らしいが、「シンク・アフリカ」がお薦め。腰を痛めないよう。

 編・集・後・記

 アーティストたちの死を悼むリポートが並び、湿っぽいフジ特集になりました。

 寂しさはあります。でも。

 忌野清志郎が、アベフトシが死んでも、RCサクセションの日本語ロックは、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのガレージなサウンドは残る。何より、ロックンロールは死なない。先人の歩みを受け継ぎ、新たな発明を加えながら生き続けていくに違いない。

 その営みを支えるのは、私たちのロックへの愛です。

 フジのオーディエンスは心強かった。リアルタイムでもないのに頭脳警察の「銃をとれ」に、サニーデイ・サービスの「ここで逢いましょう」に聴き入り、大槻ケンヂと一緒に「踊るダメ人間」で��×ジャンプ�≠�決め、売れ線ではないソウル・フラワー・ユニオンの「ラヴィエベル〜人生は素晴らしい!」でも大暴れ。

 素晴らしい音楽に素直に反応できる心を持とう—死を悼む言葉の数々に、会場の一体感に、あらためてそう誓ったフジでした。 (OK電算機)

(2009/08/08)



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