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特集フジロック'09 〜4万人が揺れた瞬間

 7月24ー26日に開かれたフジロックフェスティバル'09@新潟県苗場スキー場。メーンのグリーンステージ、初日のトリは“現代のザ・ビートルズ”oasis。激しいステージングなど「小細工なし」(ボーカルのリアム・ギャラガー)、歌のみによって勝負した彼らと、4万人収容のステージを埋め尽くしたオーディエンスがつくり上げた1時間半のライブ。それは現在のロックやシーンの貧困を超えた、至福の時空だった。

特集フジロック'09  〜4万人が揺れた瞬間

 ただ…8月末、リアムの兄でギター&ボーカル、そしてソングライティングの核でもあるノエル・ギャラガーが脱退を表明。oasisは解散の危機にある。「いつも通りの兄弟げんか」「いつも通りの復帰」を願い、今夏のフジがノエル&リアムがそろった最後のライブ・イン・ジャパンにならないことを祈りながら、特集をお届けしよう。

 僕たちはこれからもoasisによる至福の時空、特に「あの瞬間」を待っている。

 

oasis01  体中に打ち付ける大粒の雨も、靴が甲までめり込むほどのぬかるみも、オーディエンスには関係なかった。1994年の1stアルバム、そのオープニングナンバー「ロックンロール・スター」で開幕。続けて2005年の6thから「ライラ」、2008年の最新7thから「ショック・オブ・ザ・ライトニング」。シングル曲の連打にオーディエンスは沸騰しっぱなしだった。

 終盤。「雨やんだな」とオーディエンスに語り掛けたノエルが、ギターをつま弾きながら歌い始めたのがこの曲だった。1995年の2ndからのシングル。スローナンバーの「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」。

 イントロが終わる。Slip inside the eye of your mind…と歌が始まるのと同時だった。本人の声より大きな大合唱が巻き起こり、会場全体が一体となって左右に揺れ始めた—。

 近年、著しい不況にあえいでいる音楽産業。その中で何とか売り上げを維持しているのが巨大野外フェスであり、それに目を付けた人々は「フェス仕様」といえる曲作りを進めた。不特定多数の、自らのファンではないオーディエンスの心をつかもうと、キャッチーでダンサブルな曲を…そんな指摘は少なくない。

 特徴は、速くて大音量のリズム。個性を失ったサウンド。どうでもいい歌詞。そうした曲は特定の人々にしか愛されず、一瞬にして飽きられていく。そして、次も似たような曲が手を替え品を替え作られ…この繰り返しこそ、恐るべき速度の消費社会におけるロックの貧困である。

oasis02  oasisは違った。毅然(きぜん)とスローナンバーを、「ドント・ルック・バック—」を放つことができた。

 理由は、こういうことだと思う。

 90年代前半のUKインディーシーンの自由な空気が、UKロックの伝統濃いこの曲のリリースを許し、伝統を受け入れる時代の空気がすぐさま名曲に押し上げた。が、90年代後半はUKギターロック混迷の時代。多くの曲が支持されてはすぐに消えていく中、oasisはノンストップでツアーを続け、この曲を演奏し、ベスト盤に収めた。結果、リリースから14年という時間を、世代を、言語の壁を超えて歌われる曲となった。

 歌い、揺れているオーディエンス一人一人に「ドント・ルック・バック—」との思い出があるに違いない。自宅で、車の中で、カラオケで、ライブハウスで、クラブで、この曲を聴いた「あの時」が。

 割れんばかりの歓声と拍手に包まれ、「ドント・ルック・バック—」が終わった。続いて「シャンパン・スーパーノヴァ」、そして「次の曲が最後だ」と「アイ・アム・ザ・ウォーラス」。“現代のザ・ビートルズ”が鳴らす本家の曲に会場はまだまだ揺れていた。愛され続ける曲をまた一つ、聴いた。


 

 ロックと人々の豊かな営みを、oasisだけでなくUKのベテランとゼロ世代が、フジのステージで見せてくれた。

ポール・ウェラーポール・ウェラー 初日、oasisの前にグリーンを盛り上げたのが、彼らも敬愛するモッドファーザー。ソロのナンバーにザ・ジャム、ザ・スタイル・カウンシル時代の曲も交え、体から蒸気を立ち上らせながらの熱演。ラストは「タウン・コールド・マリス」。見事な大団円だった。

フランツ・フェルディナンド

 フランツ・フェルディナンド  2日目のグリーンのトリ。「歌える」プラス「踊れる」ロックの真骨頂は、アンコール前の本編ラスト、2nd収録の「アウトサイダーズ」。CDとはまったく違う! 前回のフジ'06同様、全員でドラムたたきまくりのトライバルナンバーに生まれ変わらせ、会場を沸かせた。


 

 フジの広大な会場で、しかも連日3万人を超える集客の中、高知から来たオーディエンス=フジロッカーズに会えた。彼、彼女たちの(1)交通手段/宿泊先、(2)参加日数、そして(3)ベストアクト、は? フジロック会場・夜
小松尚明(29)
  尚子(28)=南国市
 (1)高速バス&神戸発着の夜行ツアー列車/キャンプ
 (2)3日間
 (3)尚明=レーヴェン 尚子=ファンキー・ミーターズ
上岡亮一(31)=高知市
 (1)車/オートキャンプ
 (2)3日間
 (3)曽我部恵一BAND
豊崎綾(28)=高知市
 (1)高速バス&鈍行列車/徹夜
 (2)最終日のみ
 (3)ジミー・イート・ワールド
一藤将文(26)
二宮康公(25)=高知市
 (1)飛行機&新幹線/キャンプ
 (2)3日間
 (3)一藤=ストリート・スイーパー・ソーシャル・クラブ 二宮=フジロックというもの、そのもの

 

 北も東もスカで沸く!

 

サマーソニック'09@千葉マリンスタジアム&幕張メッセ、8月7−9日 初日は、今年で活動を停止するナイン・インチ・ネイルズ。シンセをけり、ギターを投げ、異常なテンションで進行していくライブを、突然の雷雨が加速させる。ラストは2ndアルバムから「ハート」。絶望とわずかな望みを歌ったこの曲が、まるで「再会の約束」に思えた。

 2日目はザ・ティン・ティンズ。打ち込み主体のサウンドはシンプルだけど軽くない。無駄な音は鳴っていないし、これ以上、必要な音もない。そんなダンスビートは確実にフロアを盛り上げた。

 もう一つ、2日目から。ザ・スペシャルズ。30年前。1stをむさぼり聴いていたころはライブが見られるなんて考えもしなかった。「リトル・ビッチ」がディスコのフロアを席巻していたころで、生演奏でジャンプするなんて夢にも思わなかった。それがこの夏、現実に。疾走感、楽曲のクオリティーは当時のまま…いや、それ以上。21世紀バージョンとしてルードボーイたちの体を揺らす。ロックがフィジカルに訴えるものだと再確認させてくれた、熱くて楽しいライブだった。 (土佐市、豪遊亭EKP)


 

ライジングサンロックフェスティバル'09@北海道石狩湾新港、8月14−15日 ベスト3。3位は地元出身のサカナクション。「ネイティブダンサー」「ナイトフィッシングイズグッド」「三日月サンセット」で跳び続けるオーディエンスを、ボーカル&ギターの山口一郎がまるで指揮者のようにあおり、動かしていたのが圧巻。

 2位はBEAT CRUSADERSやSCOOBIE DOなどによるスペシャルセッション「SHOULD I STAY OR EZO? 〜真夜中に初期パンを〜」。セックス・ピストルズ、ザ・ダムド、マイケル・ジャクソン(?)などの曲を披露。ジョー・ストラマーが「好きすぎ」て自分で歌うと言いだした怒髪天のドラマー、坂詰克彦の「ロンドンは燃えている!」「アイ・フォート・ザ・ロウ」にしびれました。ラストはザ・スペシャルズ「リトル・ビッチ」。会場はお祭り状態でした。

 1位はPOTSHOTとKEMURIのメンバーらが結成したREDEMPTION 97。ボーカル、Ryojiの「今日一番のスカダンスをみせてくれるかい」で激しさを増すダンス。ベース、Tsudaの「回れ!」で巨大モッシュサークルも起きた。ホーンありのスカは勝手に体が動く、と実感。 (編集部、猿惑星博士)

 編・集・後・記

 フジロック取材で泊まったホテル。部屋のキーを受け取ろうとフロントに並んでいると…見知らぬ外国人が僕の肩をたたき、目の前にぽんとバッジを置いて言った。

 「お前のTシャツにプリントされてるヤツだ。好きなんだろ?」

 ジョー・ストラマーTシャツの僕に、ジョーのバッジをプレゼントしてくれたのだ。

 フジに通って4年。毎年、こんな出会いがある。今夏はほかにも、忌野清志郎スペシャル・メッセージ・オーケストラを見終わって「最高!」と意気投合した青年に、「でも、今年の一番はこれ」とパティ・スミスと一緒に撮ったデジカメ画像を見せられたり。

 その直後、アメリカ人の若いカップル(女性はビョークをもっともっとかわいくした感じ?)から「日本語は分からないが、素晴らしい雰囲気のライブだった」と声を掛けられ、しばらく語り合ったり。

 フジが、音楽がくれる出会いが、心をほわーんと温かくしてくれる。だから、「来年も」と思う。 (OK電算機)


(2009/09/04)



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