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「旅」が生んだロック〜MUSHA×KUSHAが新作

 「旅」の結晶である。高知生まれのバンド、MUSHA×KUSHA(ムシャクシャ。以下、M×K)が今秋、2年ぶりにリリースした7枚目のアルバムは。

 1500。結成から12年目の今年5月に彼らが達成した、全国各地で続けてきたライブの合計本数である。それは、機材を積んだ車での何百キロもの移動と汗だくのライブを重ねた孤高の足跡であり、メンバーチェンジの都度、ゼロからサウンドとステージングを熟成し直し、再生してきた不屈の歩み。

 「一発やらせろ!」と名付けられた新作は、そうした意味での「旅」の、直近2年分が結実したロックである。

「旅」が生んだロック〜MUSHA×KUSHAが新作

 9月3日、「一発やらせろ!」リリースの翌日。高知市のライブハウス、X-pt.のステージにM×Kは立った。

 4弦ギター&ボーカル・池田浩之(34)、鍵盤・北澤博之(27)、ドラム・後藤伸正(25)、5弦ベース・足立誠二(22)が轟音(ごうおん)をかき鳴らし始めると、モヒカンに白塗り、特攻服姿のもう一人のメンバー=ボーカルでもダンサーでもない。パントマイムのような動きを交え、舞う。姿、動きのすべてで表現する者=バンド名にちなみ「蟲役者(むしやくしゃ)」と名乗る梅原江史(33)が登場。

 実は、かき鳴らされた轟音こそ1曲目だった。演奏時間1分足らず。ほとんどのオーディエンスが曲とは分かっていなかっただろう。新作で初めてチャレンジした短いインスト群。その1つ「右も左も…」。

 「マイナーチェンジしようとは、いつも思ってます。今回の(短いインスト群)は自然に出てきた感じですけど」と池田が説明する通り、M×Kサウンドのキーワード「『和』のテイスト」「昭和歌謡」「複雑怪奇」をうまく裏切った。

 2曲目は、それが一転。持ち味の「和のテイスト」を最大限に発揮した「一発やらせろ!」のオープニングナンバー、シンセによるエモーショナルなリフが印象的な「カルマ」へとなだれ込んでいった。

      §§§

 メンバーチェンジは、これまでに5回。オリジナルメンバーは高知出身の梅原、池田のみ。北澤(静岡)は2004年1月に加入した。

 後藤(香川)、足立(熊本)は07年9月。2人を加えてのライブが100本を超え、高知へ凱旋(がいせん)した08年4月、梅原はいった。「2人がやっとM×Kらしくなってきました」

 近年は年間約200本、ライブしている。「もうライブは呼吸と一緒。飽きる、飽きない、じゃない」(池田)。そんな生活を共にすることで、新メンバーは「M×Kになる」のだ。

 加入時、20歳にもなってなかった足立が、随分と頼もしくなった。「池田さんのギターは低音も大きくて、自分のベースはいらないんじゃないかと思ったこともあります。でも、そこでどう弾くか…そんなことを考えるようになりました」。新作収録の「花火」では、池田がスタジオに到着する前に「先にやったもん勝ちだ」とアコースティックギターを弾いている。

 後藤も、だ。ライブハウスの楽屋。練習する池田、足立の傍らで、ドラムという自らが向き合う楽器のないまま過ごす。「確かにツアー生活で練習時間は限られてます。でも(ライブという「本番」を繰り返すことで)気持ちが曲に入っていけるようになった。逆にレコーディングでも、ライブのテンションでしか演奏できなくなってますけど」

 一方、「元からいるメンバーも、新メンバーを加えて曲もステージでの動きも作り直す」(北澤)とも。その結果…池田と北澤が、同じことをいった。「アグレッシヴになった、若返ったとよくいわれます」

 すべては、「旅」の果てに手に入れた進化である。

 「新しい曲が生まれた瞬間、昔からの曲を今のメンバーでリアレンジできた瞬間、それぞれ旬の時期に録(と)りためたものが『一発やらせろ!』です」。梅原が自信を込めて言い切った。

7thアルバム「一発やらせろ!」解説

 X-pt.でのライブ。中盤は新作からの曲を連打した。昭和歌謡と1980年代ハードロックをブレンドした「リターンマッチ」、和のテイストと変拍子、転調が怪奇さを増幅する「メリーゴーランド アンダーライン」「バケクラベ」。アンコールのラストも、新作に収めた過去曲の再録「ドウシタエェ」で締めくくった。

 新作は全17曲。梅原の熱いポエトリーリーディングがのった「野に下れ」など、ほかにもライブで聴いてみたい曲ばかり。それは旅を重ねるうちに披露されてゆくと思う。11月22日、再びX-pt.で行われる高知ライブ=1624本目でも、きっと。



 ロック回すDJ2人組

 ロック回すDJ2人組 DJがロックをスピンするクラブパーティーは、嗜好(しこう)が多様化した近年、さまざまな壁にぶつかっている。ロックは好きだがライブハウスしか行かない、クラブに行くがハウスやヒップホップなど定番ダンスミュージックがいい、ロックでも洋楽はちょっと…など。

 9月18日、そうした状況を変えようと高知に新しいロックパーティーが生まれた。DJ2人組、Chupa Chups主催の「ROCKET☆PUNCH!」。

 1998年、大阪でロックDJをスタート。2005年の帰高後も数々のロックパーティーに参加してきたHAYATO(29)=写真手前=はいう。「ロックは、その曲を知ってないと踊りづらい。ハウスのように一定のリズムでギターの音が入っていたり、ロックっぽいものを回す」。狙いは定番ダンスミュージック好きのクラバー。

 相棒はKENKEN(34)=同奥。「2人で次々と曲をかけていく。それが生演奏な感じがして面白い」と、ライブに近いものを出そうとしている。

 この夜、2人が登場したのは午前0時。エレクトロ、ロッキンハウス、中だるみしそうになったらプライマル・スクリームの「ロックス」。2人のプレイがフロアを沸かせる。クライマックスを演出したのはマキシマム ザ ホルモンの「恋のメガラバ」。夏フェスのように盛り上がった。

 「壁を壊したい。2、3年後、僕らのような動きに火が付いてくれたら」とHAYATO。その思いが現実になった時、高知に一大ロックシーンが生まれる。

 

 日米スカ頂上決戦

 ザ・ケミスツ「Q・ジャンプ!!!」 今年初め「ジョイン・ザ・Q」で華々しいデビューを飾ったイギリス出身3人組の、日本限定EP。ドラムンベースが疾走し、ロッキンサウンドが畳み掛けてくる。「オン・ザ・ラン」セルフリミックスは激熱で、凶悪な��薬剤師�≠フ処方せん。中毒にご用心を。 (編集部、爪9センチ)

「ヴードゥー・グロウ・スカルズ/REDEMPTION 97」  「ヴードゥー・グロウ・スカルズ/REDEMPTION 97」=写真 アメリカの大ベテラン、ヴードゥー—と、KEMURI、POTSHOTの元メンバーらによる新バンドの、スカパンク頂上決戦スプリット。ネオスカ、レゲエ、2トーン、ロックステディな楽曲がぶつかり合う熱い1枚。 (編集部、猿惑星博士)

 ハバナエキゾチカ「火星ちゃん こんにちは」 先月紹介したバンド「踊ってばかりの国」の名前はきっと、ハバナの1stから。これは1992年の2nd。日本でファンク&スペーシーなダブを、フィッシュマンズと同時期にやってたガールズバンドがいた…その事実を多くの人に知ってほしい。 (編集部、OK電算機)

 編・集・後・記

 MUSHA×KUSHAの新作「一発やらせろ!」に収められている曲「バケクラベ」。作詞した梅原江史は、「若い人がSNSとかで仲間になってるみたいですけど、バーチャルなものの危うさを感じる」という思いを込めたという。

 人と人のつながり。さて、当の本人は—。

 「初めてのライブハウスへ、親しいバンドに呼んでもらったりするでしょ。その時、サポートしてくれる仲間をもっと広げたいと思うんです。ほかのバンド、ライブハウスの方、お客さん。きちんとつながらないと、次にそこへ行ってもまた『初めまして』になる。それじゃいけない」

 Chupa ChupsのDJ HAYATOは、ロックパーティーに出るのに苦労した。「『ロックDJしたいんです。パーティーやりましょう!』と高知に帰って1年間、いろんな人に言い続けた。服屋、飲食店、音楽関係の。今回のお客さんには、その時に出会った人が結構いますね」

 こんな若い人たちもいる。 (OK電算機)


(2009/10/02)



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