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SONIC WEB版

大学組が沸かせた'09高知

 予兆は今春、雨の高知市・中央公園にあった。ライブハウス、X—pt.による「土佐のおきゃくロックフェス」第3夜。大学生バンド3組が(1人は既卒だが)、家路を急ぐ人々をくぎ付けにした。

 やがて起きた現象。それは「'09高知のロックシーンを沸かせたのは彼らだった」ということだった。SEATTLE。NEO—GRIST。フィモシス。切磋琢磨(せっさたくま)し、CDをリリースし、時に3組共同でイベントを開きながら、オーディエンスに「ライブの楽しさ」を伝えた。それぞれが違った個性で。

 '09の月刊SONICは、そんな3組を紹介して締めくくろうと思う。


フィモシス

フィモシス  高知大学4年生4人組が放つのは、ガガガSPなどのような青春パンクだ。

 2007年春、結成直後はメロコアのコピーだったが、すぐさま「お客さんに楽しんでほしい」と路線変更。もともと青春パンク好きのもっさん。さらにメンバー全員が「モテたい」「オレが!オレが!」主義。パンキッシュでにぎやかに演奏できることが、「オレが!」を満足させてくれた。

 が、あくまでガガガSPなどの「ような」である。誰かに愛を叫ぶ従来型ではない。日々悶々(もんもん)とし、恋愛妄想を膨らませる独自の青春パンク。曲作りの中心、もっさんは「歌うたいのバカっ子」という曲で告白している。「『あの娘(こ)は今頃(いまごろ)何をしてるかな?』…そんなコト考える相手もいないのさ だから妄想に命をかけてやるのさ」

 妄想が最高速で暴走したのは08年春。「鬼畜ベイベー」という曲に結実する。「クラスで1番可愛(かわい)いあの娘」に「男子はほとんど食われた」、次は自分が「食われる」ことを夢想する—そんな曲に。しかもこの曲は愛された。ライブで「鬼畜ベイベー、鬼畜ベイベー」とコール&レスポンスを引き起こすようになった。

 10月の初主催イベント。スタート前、もっさんは言った。「今日来た人の中に、好きな子ができるかも」。曲は愛された。自身は…妄想はまだまだ膨らみ続けている。

 1stアルバム「おなかいっぱい」 10月リリース。「鬼畜ベイベー」など全9曲。スローナンバーも独特の味。


NEO—GRIST

NEO—GRIST  危なっかしいものに若者は魅入られる。その一つが「速度」。音楽の世界においても、ハイスピードな楽曲は若者の特権だ。1970年代の音楽的革命であるパンク。90年代に生まれたメロコア、エモコア。こういったジャンルの「今再び」の隆盛はその証左だ。

 NEO—GRIST。彼らの持ち味もハイスピード。メロディーはエモーショナルで時にポップさも加味する。

 高校時代に愛聴したNOFXが原点にある広瀬だが、「エモコアをやろうと思ってません。曲のスピードを速くしたくて。マイナーコードも好きになって。結果、たまたまこうなった」。

 2007年4月、彼が高知大学4年生の時。同好の士を探し、高校時代にlocofrankを練習していた後輩の相部らと結成。さらに、高校時代からメロコアバンドをやり、「SNAIL RAMPが好き」という後輩、甲盛が同年夏に加入。現体制となった。

 速度の追求には困難がつきまとう。「得意ではない」英語で詞を書かねばならない。日本語よりスピードにのせやすく、「意味も多く込めやすい」(広瀬)からだ。ライブでは体力を消耗し、手首や肘(ひじ)に負担も掛かる。それでも…。

 高速ゆえライブで起きる激しいモッシュ&ダイブ。そんなオーディエンスの熱い要求に応えることがまるで宿命であるかのように、3人は速度を追い求める。

 1stアルバム「Valigarmanda」  11月リリース。高知エモコア新時代の開幕を告げる全10曲。


SEATTLE

SEATTLE  高校3年の春、宮内は地元・愛媛のライブハウスで高知のバンドと共演。その時、「高知工科大学ならバンドができる。スタジオもある」と聞かされる。迷わず工科大へ。「オレはバンドやりに来たんじゃあ」と、入学間もない2006年6月に同級生たちとバンドを結成する。

 それが、「音楽で生きる」ことを目指す宮内と、彼に賛同した3人からなるSEATTLE。

 これは夢への第一歩だ。ただ、4人は第一歩にして・やってしまった・。09年の高知最高傑作ともいわれる曲を作ったのだ。タイトルは「欠陥」。エモーショナルなメロディーにのるのは、ゼロ年代を覆う不安を正直に吐露した詞だ。

 「生きてんのか死んでんのか わからないんだろう 生きてるフリしとけよ」

 CDリリースは今年だが、完成は08年9月。「曲ができないと悩んでた時。全員でメロディー作って。歌詞は、いつもケータイにメモってる歌詞用の言葉の中から選んだ。その中にあったんです。『生きてるのか死んでるのか分からない』って」(宮内)

 来春、卒業を迎える宮内ら。さて、夢をどうするか—。

 今年5月、ドラムが高知大学2年生の関に代わった。戸田、原田は大学院へ。そして宮内自身は大学を休学。時間をつくり「欠陥」を超える曲作りへ突き進むことにした。音楽を学生時代の趣味に終わらせず、「生きてるフリ」をするのではなく、本気で、音楽で生きようと。

 シングル「ゆりかごから墓場まで」 2月リリース。「欠陥」や、これまた名曲「いないいないばあ」など全3曲。



 変わり続ける音の嗜好

Roi—Jypsy. 「県外にツアーに行くじゃないですか、同じライブハウスへ何回も。そこで言われるんですよ。『来る度にジャンルが違う』って。でも、それが許される、楽しみにされてると思ってます」

 高知の3ピース、Roi—Jypsy.。ドラムのARISA(22)が言うように、常にサウンドの嗜好(しこう)を変化させてきた。

 椎名林檎が好きで、高校時代から桃色グリコゲンというバンドで激しいロックをやっていたARISAとベースのSAKI(22)が、ギターのWAKI(22)と2007年1月に結成。スタート時はMCがいて生バンドでラップ、というスタイルだった。

 それが、半年足らずで一転。インストダンスロックにたどり着く。グルービーなベースと四つ打ちドラムにのるのは、ハイトーンで美しいギター。残響レコード、tの曲「明日を最も必要としないものが、最も快く明日に立ち『向』かう。」に近い、高知のどのバンドにもない個性だった。

 さらに11月にリリースしたマキシCD「Green Island」で、再び変容を遂げる。インストダンスロックも残しつつ新たにチャレンジしたのは、UKギターポップのテイストを帯びた、SAKIがボーカルを取る曲だ。

 「最初はLoop Junktionを聴いてスタイルをまねて。あとは何となく。手本? ないです。インストバンドもそんなに聴いてない。とにかく長く、みんなに愛されるポップな曲を続けたい」とWAKI。

 これからも突然変異で、次々とサウンドを変えていってくれそうだ。

 

 まさにゼロ年代型

 MOWMOW LULU GYABAN「野口、久津川で爆死」=写真 関西発ギターレス(鍵盤あり)3ピースのデビューアルバム。歌詞は「パンティー!」コールが巻き起こるほどの変態ワールド。が、サウンドは真逆。メロディアスでポップセンスも抜群。これぞまさにゼロ年代ポップス。 (編集部、猿惑星博士)

「ヴードゥー・グロウ・スカルズ/REDEMPTION 97」  ポチョムキン「赤マスク」 餓鬼レンジャー男性MCのソロ1st。向井秀徳とのコラボ曲目当てに買ったら、アルバム全体がさまざまなアーティストとの異種格闘技戦! 結果生まれたのは、反Jポップ的な多様なサウンド。1曲目「Twist It」のロカビリーテイストにいきなりやられた。 (編集部、OK電算機)

 スペース・カウボーイ「デジタル・ロック・スター」 ロックテイストを加味しながら、エレクトロ・シーンをけん引する英国の奇才DJ、2年ぶりの4th。クラブアンセム「フォーリング・ダウン」ほかハッピーチューンがずらり。個人的にはボーナストラックの「ネヴァー・アゲイン」も◎。 (編集部、爪9センチ)

 編・集・後・記

 特集で取り上げた3組が出演するイベントは、オーディエンスが多かった。ほとんどが大学の同級生。そういえば…大学生がライブハウスに大挙してやってきた年なんて、ここ数年なかった。

 つながり、だと思います。大学という同じ場所に、同年代の人々が集まる中で生まれた、温かく素晴らしいもの。

 大学生の皆さんへ。高知の音楽シーンを元気にするために、その「つながり」を少し貸してほしい。ゼロ年代最後の年を盛り上げたその力を、2010年代も活用させてもらいたい。こぞってライブハウスへ、どうぞ。

 大学を卒業していくバンドマン、オーディエンスの皆さんへ。社会に出ると集団が多様で、細切れで、つながりを持てずにいる人が少なくありません。が、皆さんなら大丈夫。大学時代に培った「つながる力」で、仲間を増やしていってください。

 でも。疲れたら、元気を取り戻しになじみのライブハウスへ。皆さんとの再会を楽しみにしています。 (OK電算機)


(2009/12/04)



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