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SONIC WEB版

ハモり/歌詞/謙虚さ CDリリースした高知のアコギ3組の個性

 高知のアコースティック・アーティスト3組が4月、相次いでCDを発表。リリース記念ライブを行った。水谷学(24)と藤本輝(24)による男性ユニット、歌実(かじつ)=写真左。ソロの北村歩(28)=写真中。タマ(26)、ゆうか(25)からなる女性ユニット、U—TA★1・7(うーた いちなな)=写真右。彼、彼女たちの個性を、CDに収めた歌やライブの様子、インタビューを交えながら紹介しよう。

 4月18日、高知市のX—pt.でのライブの序盤を締めくくったのは、サビに向け、次第に情熱的になっていくバラード。歌実がこの日リリースした1stシングル「LIFE」に収めた歌「コイシテル」だった。

 高校時代、毎夜のように高知市内の路上で歌っていた藤本と、高校卒業後、2人組で活躍していた水谷。2人が2007年5月に結成したユニットが歌実。

 「影響を受けたのは、ゆず、唄人羽です」(藤本)。10年ほど前にブレイクし、当時、ネオ・フォークなどと呼ばれたアーティストたちである。ただフォークといっても、1960年代の社会派フォークのDNAはなく、70年代の四畳半フォーク、ニューミュージック、80年代のシンガー・ソングライターの作品…などの流れをくむ、何げない日常、等身大の自分、そこから生まれる言葉を歌うもので、最大の特徴は美しい「ハモり」で歌うこと。

 2人はその「ハモり」をとことん追求している。深夜、人も車も通らなくなった地下道で練習を重ね、見つけた。声質の違いは藤本がファルセットで歌うなどして解消できると。その成果が「コイシテル」の随所に生きている。

 「ハモるってすごく気持ちがいいんですよ」と水谷。藤本はライブで、オーディエンスに向かって言った。「僕らは1人で、個人の色が出せない。2人で、ハモったりコーラスやって一つなんです」

         ■□■

 北村の音楽人生のスタートは、アコースティックギターを弾いて歌うことではなかった。中学時代はドラマー。しかもハードコア、メタルの。卒業後、音楽から離れ、5年ほど前に出会ったのが、路上で歌っていたあるアコースティック・アーティスト。「2日間、連チャンで見にいきました。理由?

 うまくは言えないんですが…とにかく心にとまった」というほど魅せられ、この道に進んだ。

 サウンドはフォークにとらわれない。いきのいいブルース、レゲエなどのバックビート、四つ打ちの打ち込みリズムも交えたアッパーな曲も得意とする。そんな個性もありながら、彼は「歌詞で自分を出したい」という。

 歌実と行った4月18日のCDリリース記念ライブでも披露し、1stシングル「ポジティブる」にも収めた歌「イッちゃいなよ」。歌詞はこうだ。「何をそんなに悩んでんの?/何をそんなに考えてんの?/それ俺にそっと言っちゃいなよ/そんでスッキリサッパリしちゃいなよ」

 続けて—お前のその涙はきっと/「(笑)=かっこわらい=」に変わるよ—。話し言葉だけでなく、今どきの書き言葉まで歌ってしまう。

 「井上陽水の『傘がない』が好きなんですよ。若者の自殺が増えていることより、雨の日、彼女に会いにいくのに傘がないことの方が問題…それって人間くさい。そんな人間くささを、普段使ってる言葉で歌っていきたい」

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 アコースティックのソロは、ユニットは、「歌いたい」という初期衝動から始まる。その気持ちを大切にし続ける3組。

 CDリリース記念ライブは、次の地平も見せてくれた。エレクトリックギターやベース、ドラムなども加えたバンドスタイルで締めくくったのだ。歌実が披露したのはCDのタイトル曲で、疾走感あふれる「LIF

E」。北村は「イッちゃいなよ」。U—TA★1・7は「道しるべ」。それぞれCDにもバンドスタイルで収録した。

 「お客さんも体で楽しめるスタイルだと思うんです」(北村)。そう、メッセージを伝えるだけではなく、フィジカルに訴えるサウンド。ライブのラスト。手拍子を取りながら揺れるオーディエンスの姿に、満足げな3組がいた。

 

 アコギサウンド3枚勝負!

ロバート・ジョンソン「コンプリート・レコーディングス」

ロバート・ジョンソン「コンプリート・レコーディングス」=写真

 1930年代、アメリカで活躍した伝説のブルーズマンが残した全音源集。詰まっているのは、どうやって弾いているのか(押尾コータローの先祖!)、どうすればそんな声が出るのか(THE BAWDIESのROYの元祖!)という驚き。ロックと呼ばれるものはすべて、ここから始まっている。

エヴリシング・バット・ザ・ガール「エデン」

 1980年代前半、ヨーロッパで一大ムーヴメントとなったネオアコ(ネオ・アコースティックの略)。そこからは映画音楽を下敷きにした、おしゃれ系(カフェ系)ミュージックも生まれた。その1枚がこれ。女性ボーカルがハスキーで味わい深く、何よりアコギに合う。

コザック前田と泉谷しげる「生活/永遠のウソつき」

 ゼロ年代に「フォーク・イズ・パンク」と叫んできたガガガSPの前田と、岡林信康を師と仰ぎフォークの道を歩んできた泉谷の合作。全4曲、2人の絶唱に、前田の叫びがうそではないと分かるはず。これはパンクである。 (編集部、OK電算機)

酒場のブルーズマン

 金曜の夜。高知市内のバーで、彼はアコースティックギターとハーモニカを鳴らし、歌っている。

 5月21日は「レット・イット・ビー」でスタート。日本のフォークもやってと客から声が上がると、「22才の別れ」。圧巻はビリー・ジョエルの「ザ・ロンゲスト・タイム」。原曲のドゥーワップ調コーラスをアコギで巧みに再現していく。

 ダニエル斉藤(32)。彼はバーでの演奏を「人間ジュークボックス」「修業」という。「いろんな曲を、しかもオリジナル通りに求められるんで」

 原点は、中学の時に深夜番組で出会った高田渡や小室等ら。高校入学。「遠藤賢司の『カレーライス』がやりたくて」親にアコギを買ってもらい、クラシックギター部へ。顧問に隠れてフォークを練習した。

 高校卒業後は友人とロックバンドを組んだ。が、2、3年で「向いてない」。もう一度、フォークへ。そして、カントリーやブルーズへ。「今度はブラインド・ブレイク、やりたくなったんですよ。このギターどうやって弾いてるんやろ…って、もう、魅了されちゃって」

 この夜も客のリクエストに交え、オリジナルを2曲やった。サウンドはブレイク得意のラグタイム・ブルーズや、つじ説法的ブルーズ。その音が風景を変える。21世紀の高知のバーを、ブルーズのオリジネイターたちが活躍した戦前のアメリカ南部の酒場に。

 時に「修業」の場を離れ、ライブハウスでロックバンドと共演する。彼に集まるバンドマンの視線—それはいつも、畏敬(いけい)の念がこもっている。

 編・集・後・記

 SONIC初のアコースティック特集です。アーティスト紹介、DISC評も含め、紙面はアコースティックギターのサウンド一色。ただ、「一色」といってもジャンルはさまざま。フォーク、ブルーズ、カフェ系。レゲエテイストもパンクもあります。

 多様性の根源。それはアコギの持つ表現力。そして、楽器を弾きたい、歌いたい、という初期衝動に簡単に応えてくれる「包容力」のように思います。

 4月終わりの肌寒い夜。高知市中心部の商店街で、若い女性がアコギで歌っていました。青春パンクバンド、GOING STEADYの「東京少年」を。その姿は、この曲が好きなんです、歌いたいんです、どうです?いい歌でしょ、と主張していました。

 10年ほど前。ゆずのブレイクで、ちまたは��ゆずもどき�≠フアーティスト一色になっていました。が、今は…今回の紙面のように、先の彼女のように、いろんなジャンルの歌がアコギで響いています。

 僕は、多様な世界がいい。(OK電算機)


(2010/06/04)



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