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SONIC WEB版

特集フジロック'10 進化示した洋楽4組

 月刊SONIC8月号は、国内有数の野外イベント「フジロックフェスティバル'10」特集!

 新潟県の苗場スキー場で7月30日から3日間開かれた今夏は、洋楽の重要アーティストがずらりと並んだ。その中から4組を紹介しよう。彼らが全力でオーディエンスに示したのは自らのロックの進化形。過去に放った名作にとどまることなく、さらなる高みを目指す姿だった。

特集フジロック'10 進化示した洋楽4組

電脳音楽に体与える トム・ヨーク(アトムス・フォー・ピース)

トム・ヨーク(アトムス・フォー・ピース)  パソコンに作りためておいた「キッドA」的な脱ロック、エレクトロニカでミニマムな楽曲群。それがレディオヘッドのトム・ヨークによる2006年のソロアルバム「ジ・イレイザー」だった。彼がこのアルバムをライブでやるために結成したのが、5人組のアトムス・フォー・ピースである。

 事前情報では—今年のアメリカツアー。アンコールまでの本編は「ジ・イレイザー」の全9曲を収録順にやった、とのことだった。

 フジロック'10でもそうなった。ただし。曲のメロディーや速度はそのままだが、質感はまったく違った。

 登場するなりピアノに向かうヨーク。1曲目「ジ・イレイザー」だ。レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーが、ベースを立てブンブンとグルーヴィーに鳴らす。盟友、ナイジェル・ゴッドリッチの打ち込みリズムも、ほかのメンバーのドラムも、パーカッションも強く、はっきりしている。

 ピアノを離れ、ギターをかき鳴らすヨーク。曲が終盤に向かって一段とパワーアップする。

 この時点で分かった。ヨークの目指したライブは、アルバムをそのままアンビエントに鳴らすのではなく、熱いステージングとともにダンスミュージックとして演奏することだったのだ。錬金術で電脳音楽に体を与えるように。しかも、フリーというレッチリのファンクネスを担う人物を加入させることで、かなりマッチョなボディーを。

 中盤から終盤の曲は、パーカッシヴなトライバルチューンに生まれ変わっていた。3曲目「ザ・クロック」。5曲目「スキップ・ディヴァイデッド」はフリーの鍵盤ハーモニカ付きだ。そして終盤。8曲目「ハロウダウン・ヒル」はチョッパーベースがうねりまくる。

 ピアノからもギターからも解放され、ボーカルだけになった時、ヨークはサウンドに合わせてよく踊った。上半身を揺らし、ステップを踏んだ。呪術(じゅじゅつ)師のように。私たちオーディエンスにもそうしろ、と。このライブはそうするためのものだ、と。

茨を持つ少年の今 ジョニー・マー(ザ・クリブス)

ジョニー・マー(ザ・クリブス)  1980年代。ザ・スミスにいた青年はボーカルのモリッシーにからみつかれ、照れ笑いを浮かべていた。90年にザ・ザで来日した時はほかのメンバーに見向きもせず、独りギターにのめり込んでいた。

 それが今—。のっけからこの写真のように、積極的にボーカルとからむ。ベース、ドラムとも。

 ジョニー・マー=写真左。パンク以降のUKロックギタリストの原型とも言われる彼が、イギリスの4ピースバンド、ザ・クリブスのメンバーとして登場した。

 マーが加入して2009年にリリースしたアルバムから、エッジの利いたギターロックが次々と放たれる。「ウィ・ワー・アボーテッド」「ウィ・シェア・ザ・セイム・スカイズ」。そして「チート・オン・ミー」。ギターが放つメロディーが、リズムが効果音が、バンドサウンドに美しくとけ込んでいる。

 年の離れた若いメンバーと、バンドを楽しむ姿。"心に茨(いばら)を持つ少年"の一人は、幸せな居場所を見つけていた。

21世紀の"飛行船" デイヴ・グロール(ゼム・クルックド・ヴァルチャーズ)

デイヴ・グロール(ゼム・クルックド・ヴァルチャーズ)  元ニルヴァーナ、フー・ファイターズのデイヴ・グロール。彼がギタリストではなくドラマーとして戻ってきた。しかもドリームチームで。ギターはクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのジョシュア・オム。ベースはレッド・ツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズ。

 バンド名、ゼム・クルックド・ヴァルチャーズ。彼らがステージに現れると次の瞬間、あの映像が再現された。「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」のPV。頭を前後に大きく振り、両手で激しくスティックをたたきつけるシーンが。

 ただし、サウンドはまったく違う。ブルーズをベースにした、フックの効いたギターリフ。手数の多さと重厚さを両立したドラム。2009年にリリースした1st収録のナンバー「エレファンツ」が、スローテンポで始まったと思いきや一気に加速すると「これは21世紀のツェッペリン!」とうれしくなった。

 ベースもさすがだ。前へ出すぎず、うねり、踊る。グルーヴの軸となってバンドを支えていた。

浮かび上がる言葉 ザック・デ・ラ・ロッチャ(ワン・デイ・アズ・ア・ライオン)

ザック・デ・ラ・ロッチャ(ワン・デイ・アズ・ア・ライオン)  レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのザック・デ・ラ・ロッチャ帰還—。

 ワン・デイ・アズ・ア・ライオンのライブが始まった。ステージ狭しと動き回るロッチャ。重厚なドラム、サイレンのようなシンセ音のループにのせて、ラップを放つ。そんなシンプルだが緊迫感あふれる楽曲は「言葉をもっと聴け」という主張のように思えた。

 なぜか。レイジの1stを思い出す。歌詞は、南ベトナム政府に抗議して焼身自殺する仏教僧の写真を使ったジャケット同様、搾取や抑圧に対する攻撃力にあふれていた。メタルサウンドと並び立っていたそんな言葉が、サウンドがシンプルな分、浮かび上がっていたからだ。

 ラストに披露したバンド名と同名のナンバー。ロッチャは叫ぶ。「オレたちは人民の軍隊として立ち上がる/食べるものもなく/休む間もなく働く人々と/裸足で歩く子どもたちのために」

 ライブは40分。予定より20分短かったが、言葉の多さ、何より重さに圧倒されて終わった。

「続けること」の大切さ 〜邦楽3アーティスト

「元」Hi−STANDARDの横山健(Ken Yokoyama),元KEMURIの伊藤ふみお,BOOM BOOM SATELLITES

 邦楽アーティスト3組は「続けること」の大切さを教えてくれた。

 「元」Hi−STANDARDの横山健=写真左=のKen Yokoyama。登場するなり「レインドロップス・キープ・フォーリン・オン・マイ・ヘッド」。相変わらずカバーセンスがいい。

 終盤。会場の空気が変わった。ハイスタの名曲「STAY GOLD」が鳴り始めたのだ。2008年のツアーから演奏するようになっていたが、今回もやはり大盛り上がり。激しさを増すダイブ&モッシュ。会場を通り過ぎていた人々もステージに向かってダッシュ。誰もが大声で歌っていた。「I won't forget…」

 そして最新作から「Punk Rock Dream」。会場と横山はともに「パンクロック!」と繰り返し叫んだ。パンクは死なない。そのことをあらためて証明したライブだった。

 元KEMURIの伊藤ふみお=写真中央=はホーン隊や鍵盤など9人を率い、90年代からこだわるスカを連打。

 中盤、「モンキー・マン」「ロック・ザ・カスバ」をカバー。そして「つらいこともあるけど、次は『毎日が輝くチャンスだ』って曲やります」とソロアルバムのナンバーへ。沸き上がる歓声。彼が訴え続ける「Positive Mental Attitude=P.M.A.」は色あせず、人々を勇気づけていた。

 90年代から海外でも注目され人気を博しているデジタルロックユニット、BOOM BOOM SATELLITES=写真右。キラーチューン「KICK IT OUT」で、縦ノリダンスの大渦を巻き起こしていた。

入場者はのべ11万人 13ステージで200組熱演



 フジロックは山々の合間にいくつものステージが設けられ、3日間、各ステージ同時進行で次々とライブやDJプレイが繰り広げられる(しかも、いくつかのステージは朝まで)。今夏は13ステージが設けられ、国内外の約200組が出演。オーディエンスはのべ約11万人が集まった。

 約4万人を収容できるのがメーンのグリーンステージ。このほかホワイトステージ、フィールド・オブ・ヘブン、オレンジコートが1万5千〜5千人入れる巨大ステージ。会場内で唯一、屋根があるレッドマーキーも約5千人。

 今回の紙面で紹介したアーティスト7組のうち、5組がグリーンステージ。ザ・クリブス、Ken Yokoyama、ゼム・クルックド・ヴァルチャーズが初日。BOOM BOOM SATELLITESとアトムス・フォー・ピースが、3日目に登場した。

 ワン・デイ・アズ・ア・ライオンは2日目のホワイトステージ、伊藤ふみおは3日目のオレンジコート。ワン・デイ・アズ・ア・ライオンではオーディエンスがあふれ、入場規制が掛かった。

 編・集・後・記

 フジ記事は続く!

 フジロックの写真撮影は「このアーティストを撮りたい」という事前の申請が必要です。僕のようなオフィシャルカメラマン以外の者に許される時間は、ライブの頭3曲分。ステージ間の移動も考え、次から次へと絶え間なく行われるライブのタイムテーブルをにらみ、選んでいます。

 どうしても「かぶって」しまい、撮影できなかったアーティストは数知れず。5年連続でフジロックを取材していますが、何度、泣く泣くあきらめたことか。

 それでも—。今夏も、ライブだけ、しかも一場面でいいから見たいと向かったステージが、いくつもありました。中でも感動したのは元ザ・ストーン・ローゼズのイアン・ブラウン。彼がラスト、「レッツダンス!」と呼び掛けて歌ったのが、ローゼズの「フールズ・ゴールド」。当時を思い出し、ちょっと涙ぐみながら聴いてました。

 このように写真のないアーティストやステージ以外の様子などは、SONICホームページのブログ「SONIC or Die」でお伝えします。今夕から第1弾をアップしますので、読んでやってください。

 紙面の方も、フジロック記事はまだまだ続きます。明日7日から3週連続、土曜日夕刊の別冊SONICで。9月3日付夕刊の月刊SONIC9月号では、高知から出演を果たしたアーティスト2組を特集します。こちらは写真付き。お楽しみに。 (OK電算機)


(2010/08/06)



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