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![]() “氷河期”でもタフな土佐人
音楽以外の娯楽の多様化などによって、CDの売上やライブハウスの動員が低迷し、音楽シーンの“氷河期”を実感するようになったゼロ年代後半。高知ではさらに若者人口の減少によって拍車が掛かり、前半の熱さをかき消すブリザードが吹き荒れた。が…2005年4月8日にスタートした当コーナー「SONIC 高・知・音・楽・通」が見つめさせてもらった土佐の音楽人たちは、5年間をタフにサヴァイヴしてきた。SONIC最後の特集、「高知のゼロ年代」後編は、その姿を振り返ろう。 高知市内の各ライブハウスは“氷河期”にあらがい続けた。キャラバンサライはインディーズロックを爆音で提供。BAY5SQUAREはハードロック、ヘヴィメタルを軸にビッグイベントを仕掛けてきた。アコースティック組をプッシュしたのはB.B.cafe。それぞれに熱い夜があった。 老舗、ハリーの家では西村卓(37)が月1イベント、キイロノセカイを02年12月にスタート。自らもバンドで出演しながら、今も第2土曜日の夜、ロックなライブを繰り広げている。 06年12月には高知市の中心部にライブハウスが二つ、オープンした。KOCHI CITY HARDCOREの牙城(がじょう)、井上賀雄(43)率いるCHAOTICNOISE。そしてベテラン音楽人、西岡隆宏(48)の情熱が詰まったX—pt.である。どちらも、それまでに築き上げたネットワークなどを駆使。全国各地のアーティストを相次いでブッキングし、地元組を共演させた。 寂しい集客の夜もあった。それでもステージには、音楽を奏でたくて仕方のない高知のアーティストたちが、自らの表現を放棄することなく全力の演奏を披露していた。 月1回の1ページ特集「月間SONIC」に登場いただいた高知のアーティストたち。主な名を登場順に列記してみる。 SPIRITUAL BOOSTER。MUSHA×KUSHA。CONGA FURY。AGGRESSION。SWAN。BLIND SNIPER。DISCAPHORICS。THE BROKENHEARTS CLUB。不良外人。ゴールデン野郎。dacota apartment。PSYCHOGUN。フォルティッシュ。アカンパニー。THE BIG FAN LADY。SEATTLE。PISTOL JAZZ。リトレイン。ダニエル斉藤。 彼、彼女たちは今も、高知を熱くしてくれている。 中でも、大きな飛躍を遂げたのがSWANだ。四万十市のライブハウス、シルバーを拠点に活動するロックンロールの普遍と破壊を奏でる3人組は、06年7月、日本有数の野外イベント、フジロックフェスティバルに出演。07年9月には、ゆらゆら帝国のインディーズ時代を支えたキャプテン・トリップ・レコーズからアルバムをリリース。地方にいても、全国に向けて発信が可能であるということを示してくれた。(おかげでSONIC自身も、特集のあり方、その後も毎夏続けられたフジロック取材など、大きく前進することができた) 一方で、解散したバンドや引退したアーティストも少なくない。惜しまれるのは06年1月に全国的オーディションで優勝し、その後、メジャーデビューを果たした4人組、MANA SLAYPNILE。08年12月に解散したが、オーディションでCharに「歌がきちんと聴こえてきた」と評された応募曲「ソングライター」が放った写実性を忘れることはできない。10年5月に解散した男女ツインボーカルの5人組、DAIBUTSUもそうだ。中南米的ダンスナンバー&ミクスチャーロックは、音楽のジャンルも、ライブとDJパーティーの垣根も超える可能性を秘めていた。 燃え尽きた者もいれば、志半ばであきらめた者もいる。 高知のほとんどのアーティストが音楽のみによって収入を得ているのではなく、仕事があり、時間をつくって音楽に打ち込んでいる。年齢を重ね、仕事や家族のために使う時間が増え…そんな一般的なライフスタイルを思えば、解散や引退も仕方がないのかもしれない。 納得のいかないこともある。突然の若い死。 それらをすべて乗り越え、今の高知のシーンはある。 ゼロ年代ラストイヤーの09年。X—pt.を盛り上げたのは、大学生組だった。きっかけは高知のパワーポップバンド、AFTER SCHOOL。20代前半の彼らが07年から大学の文化祭などに出演。そこで「大学の中だけでなく、ライブハウスでやろう」と訴えたのだ。同年代の呼び掛けに応えるように、次々と大学生バンドがX—pt.に出演し、大学の友人たちを呼び寄せる。結果、10年3月に行われた高知大生4人組、フィモシスの解散ライブは、150人を超えるオーディエンスが集まった。 そんな光景に教えてもらった。アーティストが何歳になっても活動を続けること。アーティストもオーディエンスも、新しい世代を取り込んでいくこと。この二つを持続すれば、時代と環境がどうあれシーンは輝き続ける、と。 クラブシーンにも、この手法で大きく成長を遂げたイベントがある。南園英治(42)が05年から始めた香南市、天然色劇場での夏のイベントを引き継ぎ、進化させたのがDJ SUNEO(30)。08年夏には天然色劇場のイベントを成功させ、その年のカウントダウンイベントは高知市中心部で開催した。しかも、空きビルを使った「一夜限りのスペシャルな空間」で、出演者はオール高知というコンセプトで。イベント名はMusiq Lovers。 この初回は、470人を集めた。2回目の09年4月は520人。同年12月の3回目は950人。10年9月の4回目は、ついに1000人を超えた。 SONICが見つめさせてもらったあらゆるシーンを、今一度、思い起こす。それは…ジャズの名プレイヤー、エリック・ドルフィー(1928—64年)が死の3カ月前、インタビューの答えとして放った言葉がしっくりくる。 「音楽を聴き終えた後…音楽は空中に消えてしまい、二度とつかまえることはできない」 そうなのだ。あの一瞬、一瞬は二度と取り戻すことはできない。ただ、また別の、熱く刹那(せつな)な一瞬はこれからも刻まれていく。高知が貧しく、生きづらく、若い人が少ない場所になろうとも、音楽に取り組む人間はこれからも間違いなく出てくるのだから。 そして奏でるのだ。思いのこもったサウンドを。 SONIC時代のCD 高知発の名作たち
MANA SLAYPNILE「ソングライター」 05年3月に自主制作でリリースした、1千枚のマキシ。MANAの全国行きは、この名曲から始まった。 THE BROKEN HEARTS CLUB「BROKEN ROLL」 05年の1stマキシ。2ndと迷ったが、キラーチューン「ガールフレンド」収録のこちら。 13「master of feeld」 高知のミクスチャー/ハードコアの雄が06年9月に放ったアルバム。「glow up the 13 's fist」で暴れた夜を忘れるな。 SWAN「idol no rock」 06年9月リリース。後に有名インディーズから出した「FIZZ」もいいが、本作のオープニング曲「ストロー」が忘れられない。 Goatworshipper「Goatworshipper」 高知から世界を揺るがしたDiscloseの故・川上秀樹がたどり着いたのは、爆音ノイズだった。 ゼチメチ「Zechi−Mechi」 07年7月、高校卒業間もない恐るべき2人組が残した傑作。ブルージーかつガレージなサウンド。しかもダンサブル。 MUSHA×KUSHA「ろれるりら」 07年8月の6thアルバム。近年のライブで、終盤をエモーショナルにヒートアップさせる曲「メインテーマ」は必聴。 DISCAPHORICS「Pussy 's parade」 08年4月リリース。US&UKインディー感を持った、最高のポップ感とギターの壊れ方をした全15曲。 SEATTLE「ゆりかごから墓場まで」 〈OK電算機〉の「09年の1枚」。名曲「欠陥」、その歌詞から取ったタイトル、ジャケ写。すべてが完璧。 Noweed「THE BEST OF−」 高知のパワーポップ代表が、09年3月の解散ライブでのみ販売したベスト。「ささいな気持ち」はやっぱり、いい。 ハナクソ「あきらめた大人達へ」 09年3月に投下された、青春パンクもハードコアものみこんだ一人アコギパンクスが歌い上げる反体制歌群。熱い。 DAIBUTSU「Golden Best」 09年11月リリース。男女ツインボーカルと、ダンスミュージック+ロックというほかにない個性が詰まった1枚。 フォルティッシュ アカンパニー「マダ・クライヤ」 歌中心だった彼らが、歌物ファンク=高知のSUPER BUTTER DOGに変身した10年4月の作。 Quincy McQueen「ANIMATION UNPLUGGED」 10年4月、孤高のデジタル・アーティストが投下した、爆弾のような1枚。美と破壊が同居。 THE BIG FAN LADY「THE BIG FAN LADY」 10年5月リリース。天才ロックンロール・メイカー、吉岡優二の秀作「流星ブーツ」は、泣く。 編・集・後・記最後の特集を終え、思うのは、「高知のシーンにSONICは生かされた」ということです。本文や写真、DISC紹介で登場いただいたアーティストだけでなく、すべての土佐の音楽人に(今回、名前や写真が載ってない皆さん。本当にすみません)。 紙面に出てもらいたい土佐の音楽人は、まだまだたくさんいます。もう取材させていただくことがない…それが申し訳なく、そして残念でなりません。 残るは、毎週土曜日の別冊SONICが4回。もう少し、お付き合いを。 (OK電算機) (2010/12/03)
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