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高知の街路市発掘『いちの土佐』
生産現場をたずねて
平石長さん 高知市六泉寺/唯一のユズあん入り大判焼き。オオバンヤキ。
日曜市4丁目南251番その他

世界に一つ ユズあん大判焼き

鈴なりのユズの前に立ち、笑顔の平石夫妻高知高速道を降りて、しばらく平たんな道を進む。四国山地の中央部にある大豊町。車は坂道をどんどん駆け上がっていく。視界が突然広がった。11月。遠くに見える山は雪をいただいている。眼下には、太陽を受けた、たくさんの黄色いユズの実が輝く。微風に心地よさそうに揺れていた。

日曜市で、大判焼き(太鼓まん、回転焼き、今川焼き)の店を出している平石長さん、文子さん=高知市六泉寺=のユズ畑。もともと長さんの祖父が植えた。その数800本。「気候に合った果樹を」と研究し、生育に成功したが、地元ではほとんど定着しなかった。「このユズを昔、馬路村から見学に来たんですよ」と長さん。

その後研究、改良を重ね、『ユズの馬路村』は高知県で、最も元気な自治体の一つとなった。平石家のユズ畑は「馬路のユズ」のルーツの一つといってもいいかも知れない。

たわわになっているユズの一つを搾って、飲ませていただいた。甘い。ちょっとした苦みが隠し味のすっきりとした天然の甘さ。寒暖の差が激しいこの地のもたらした恵みが感じられた。

ユズの向こうに青空が広がる
【写真説明】鈴なりのユズの前に立ち、笑顔の平石夫妻(上)とユズの向こうに青空が広がる(下)

さまざまな職業を体験

収穫にも手間がかかる2年に一度、肥料を入れるだけで、農薬を全く使わない自然栽培。霜が降りたら、皮が固くなるので、11月初旬から中旬にかけてがユズの収穫期になっている。膨大な数になるので、人を雇い、一気に取り入れる。

ユズ畑の近くには、築200年以上の民家が建っていた。長さんの実家。長さんは高知市に居を移しているので、今は誰もいない。いろりを使っていたのであろう天井についた炭が、昔の民家の素朴さ、懐かしさを呼び起こしてくれる。

この家を出た長さんは、さまざまな職業を経験した。映画「ALWAYS 3丁目の夕日」で描かれていた昭和30年代前半。長さんは、当時にしては珍しい運転免許の持ち主だった。

トラックや乗用車を運転。角材、カーバイト、それに鮮魚など、さまざまなものを運んだり、売り歩いた。やがて日曜市の甘栗を運んでいた関係で、市(いち)に、うどんやそばの店を出す。それが大判焼きの店につながっていった。

もともと研究熱心。文子さんの父がお菓子職人をやっていたことから、教えを受け、改良を重ねて、好評に。

いろりの炭がついて年輪を感じさせる実家
【写真説明】収穫にも手間がかかる(上)といろりの炭がついて年輪を感じさせる実家(下)

近所も手伝いユズ搾り

ゆずを搾る平石さん「大判焼きは皮がポイント。いかにふわふわで香ばしい皮にするかに力を入れました」

つぶあん、しろあんの大判焼きに加えて、平成17年ごろから、ユズあんの大判焼きが新しいメニューに。もともと実家で取れたユズを売っていたが、これを何とかあんに活用できないかと考えた。

京都で10年間板場の修業をした息子さんの協力を仰ぎ、味を開発。市の周辺のお店にも味見してもらい研究を重ねた。歳月を経て、すっきりした苦みのあるユズあんが完成した。

高知市の平石家の自宅。収穫したユズを一つ一つ文子さんが丁寧にふく。長さんが自作の搾り器で、ユズから汁を搾り出し、残った中身は近所の人の手伝いで皮だけ残す。

皮をプラスチック製のたるにつけ、塩をまぶす。総量25キロの石を重しに1年寝かしたあと、水につけてで戻し、ミキサーにかける。それに砂糖を加え、1時間ばかり煮たあと、こして冷蔵庫に保存。市で大判焼きを焼くときのあんに使う。

添加物は全くなし。「ユズだけのアンコの大判焼きを売っているのは、日本ではうちだけ。よそは白あんが混じる」と平石さん。

手間、暇をかけた丹精込めた味はお客さんが一番よく知っていて、午前中には売り切れてしまうという。

ほのかな苦みと、自然の甘さ。平石夫婦のこれまでの喜怒哀楽が、口の中で豊かに広がっていくように感じられた。

完成したゆずあん
【写真説明】ゆずを搾る平石さん(上)と完成したゆずあん(下)

(2010/02/03)

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唯一のユズあん入り大判焼き 平石長 高知市六泉寺/唯一のユズあん入り大判焼き。オオバンヤキ。
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